1.遺産分割協議書の作成

相続開始と同時に遺産は全相続人の共有になります。つまり、未分割のままでは、全相続人の合意が無ければ処分する事ができません。
そこで、相続人全員の協議により、遺産を分割し、財産ごとにどの相続人が所有するか決定します。これを遺産分割といいます。それにより各相続人は自由に遺産を処分することができます。
家財道具などは、どこにも登録されているわけではないので、書面を作らなくても協議さえ成立すれば、自由に処分できますが、例えば、不動産は法務局に登記されており、自動車は陸運局に登録されております。こうした名義変更手続をしなければ、自分が取得したことを第三者に証明できません。そして、こうした名義変更のためには、遺産分割協議書という書面が必要となります。また、相続人間においても後日の紛争を予防するため、書面として協議書を作成しておくのが望ましいのです。

2.不動産など相続した財産の名義変更

相続が発生した場合に、届出、申請しなければならない手続は多数あります(別紙一覧表をご覧下さい)。下記は特に相談の多い不動産について必要書類です。その他の手続はこちら。

<不動産の相続手続き必要書類>
必要書類通数
被相続人戸(除)籍謄本など(出生から死亡まで)各1
戸籍の附票または住民票の除票1
相続人全員戸籍謄本(遺産を相続しない人も含む全員)各1
住民票各1
印鑑証明書各1
相続内容の特定遺言書1
遺産分割協議書(実印を押印したもの)
・遺言書がある場合は、遺言書が優先します。
・遺言書、協議書ともに不要な場合もあります。
1
その他不動産の登記謄本各1
不動産の固定資産税評価証明各1
委任状(司法書士へ委任する場合)1
事例によって、その他必要な書類がいる場合もあります。各1

3.根抵当権の承継

個人事業主など根抵当権で融資を受けていた人(債務者)が死亡した場合、まだ残っている債務(借入金)は相続人全員が自動的に相続します。相続人(妻、子、親など)は借入金は相続したくありませんと言えません。
しかし、借入金を相続したくないばかりに相続放棄をするとプラスの財産も相続する権利を失ってしまいます。根抵当権による借入金を相続したくないからといって相続放棄をすることは現実的ではありません。全員が相続をする登記をした上で、次の段階の「指定債務者合意」の登記で金融機関と相続人が新たに債務を引き継いで金融機関と取引を継続する相続人を決めます。必ずしも相続人全員が根抵当権の債務を引き継ぐ訳ではありません。 しかし、この根抵当権の指定債務者の登記は、相続発生から6か月以内に合意するだけでなく登記まで申請しなければなりませんのでご注意下さい。

4.遺留分減殺請求

遺留分とは、被相続人の意思(遺言や生前贈与など)によっても侵す事のできない相続人の権利と言えます。遺留分の権利がある相続人とは、配偶者、第1順位(子供)、第2順位(親)であり、兄弟姉妹には遺留分がありません。

遺産総額に対する遺留分の割合は、

・直系尊属(親・祖父母など)のみが相続人の場合 3分の1
・それ以外は 2分の1

遺言等により遺留分を下回る財産しか相続できない時、「遺留分減殺請求権」を行使する事により、遺留分に相当する財産を受け取る事ができます。

遺留分減殺請求権は、

・遺留分の侵害を知ってから1年
    または、
・知らなかったとしても相続開始から10年

の間に行使しないと時効により消滅します。

遺留分は相手方に「遺留分の減殺を請求する」意思表示するだけで効力が発生します。内容証明郵便等で遺留分減殺の意思を示せば、知ってから1年の時効を中断させることが出来ます。その後、すみやかに減殺手続きをとることが望ましいかと思います。なお、遺留分減殺請求は、裁判所であっても、裁判外であっても請求することは可能ですが、事実上遺留分が絡む案件は裁判になることが多いです。