相続手続

1.相続発生後の遺言

遺言書があるかどうかを調べます。金庫や引出しなどいろいろなところに保管されていますので、確認してください。公正証書遺言については、公証役場で公正証書遺言があるかどうか検索することも可能です。この点、自筆証書などは被相続人が遺言を残していたとしても、それが発見されなければ、結局被相続人の最終意思は反映されないまま遺産分割されてしまう恐れがあります。
自筆証書遺言などの公正証書以外の遺言が発見された場合には、まず開封せずに家庭裁判所の検認が必要になります。また、封がされた遺言書を勝手に開封すると5万円以下の過料に処せられる恐れがありますのでご注意下さい。

2.相続人の確定

戸籍謄本等を収集し、相続人が誰であるかを確定させます。 なお、相続人が複数いる場合に誰が何を取得するかは後述の遺産分割協議で自由に定めることが出来ますが、一応は法律上法定相続分が定められています。

第一順位 妻・子  妻 1/2 子  1/2(複数の場合按分)
第二順位 妻・親  妻 2/3 親  1/3(複数の場合按分)
第三順位 妻・兄弟 妻 3/4 兄弟 1/4(複数の場合按分)
※妻がいない場合は、残りの者で妻の相続分も相続します。

また、代襲相続といった制度もあります。相続人は、被相続人が死亡した時に生存していなければなりません。すると、生きていれば相続人になれたのに、被相続人より早く死亡したと言うだけで、何も受け取れないとすると、先に死亡した者の家族にとって大変不公平なものとなります。

そこで先に死亡した者に子供がいれば、死亡した親に代わって相続人となるようにしました。親に代わって相続人になったものを「代襲者」、死亡した親を「被代襲者」と呼びます。

3.相続財産の調査、財産目録の作成

被相続人が生前に持っていた財産を調査します。
代表的なものを挙げると次のようになります。

・不動産
・銀行等の預貯金
・有価証券・株など
・現金
・債権
・家財道具
・負債・保証契約など

不動産は、固定資産税の納税証明書や名寄せ台帳を取得するのが調べやすく便利です。 預貯金は、通帳が見つかれば残高を調べ、かつ同じ銀行に複数の口座がないか名寄せを依頼します。通帳が見つからないが、口座があることを知っている場合には、当銀行へ残高を確認します。どの銀行に口座が有るのか知れない場合、被相続人が立ち寄りそうな銀行をしらみつぶしにあたることになります。
負債や保証債務については、銀行であれば、残高調査で判明することもありますが、消費者金融や信販会社の場合、場合によっては信用情報センターを検索することも必要でしょう。相続放棄できる期間は原則3か月以内ですから、借金等がある場合は特に注意が必要です。

4.準確定申告(所得税・消費税)の手続き

被相続人の確定申告を通常の確定申告と区別して「準確定申告」といいます。
この準確定申告の申告期限は、他界された日の翌日から4ヶ月以内です。

準確定申告の手続きが必要な方の例

  1. 生前に毎年確定申告を行っていた人(事業・不動産・年金等の収入がある人)
  2. 事業や不動産等の収入がある方で、前々年の収入(売上高)が1,000万円を超えている方は、消費税の申告・納税が必要になる場合もあります。
  3. 会社にお勤続中に他界された方で、年末調整を行っていない方
  4. その他

準確定申告を行うことで、所得税の納付・または還付をうけることができます。
この場合、通常の確定申告とは異なり、別途附表を添付して税務署へ提出することになります。

5.相続放棄・限定承認の手続

相続放棄および限定承認の手続は、「家庭裁判所」に対して行います。そして、自分が相続人として相続の開始があったことおよび相続財産の存在を知って(認識して)から3か月以内に行わなければなりません。
相続放棄をすることで、財産の調査の上、マイナスの財産(借金や保証人になっているなど)がプラスの財産を上回る時に借金等を背負わなくてもよくなります。
とはいえ、3か月という非常に短い期間のため財産を調査しきれない場合もあります。このような場合、限定承認をすることで、一応は財産を相続しますが、借金が判明したときには相続によって取得した財産の範囲で支払う義務を負います。

なお、一部でも財産を受けたりしてしまった場合には、相続放棄できなくなりますので、ご注意下さい。

6.成年後見・特別代理人

(1)成年後見
成年後見制度は、判断能力が低下した状況における本人の生活、療養看護、財産管理を支援する制度です。成年後見が必要な場合として、不動産の購入など重要な契約を締結する場合や、相続人となる場合などがあります。更には、悪徳商法などに頻繁に騙されている場合や施設への入居等の契約でも場合よっては必要になります。
例えば、相続の際、認知症、精神障害など判断能力を欠く方が相続人にいる場合、遺産分けをすることができません。この場合、成年後見人選任などの法的手続きをとらなければなりませんので、ご注意ください。
また、契約の際、当事者が正常な判断ができず、契約が出来ないことがあります。成年後見が必要な方と契約をした場合に判断能力が欠けているにも拘らず、安易に契約をしてしまうと契約取消などの危険性もあります。

(2)特別代理人
相続人に未成年者や被後見人がいる場合、未成年者は遺産分割協議に参加できません。そこで未成年者の代わりに親権者が遺産分割協議に参加するのですが、親権者や後見人が共同相続人になる場合は、相続人間で利益が相反する関係になりますので、未成年者や被後見人である共同相続人の代理行為はできません。この場合には、特別代理人の選任をする事になります。特別代理人の選任については、未成年者や被後見人の住所を管轄する家庭裁判所に特別代理人選任審判を申し立てます。